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ある看護師長さんの手記

ある病院のがん相談支援センターの看護師長さんが書かれた手記を読み胸が熱くなりました。

少しご紹介させてください。

 
~花屋の店先に、ポインセチアの鉢が並ぶ季節となりました。
 
欧米では一名、クリスマスフラワー。
 
緑と赤のコントラストが、さまざまな記憶を呼び覚ましてくれます。
 
ほっこり思い出したのは、もう10年余りも前、頸部腫瘍で入院していた女性のことです。
 
放射線治療でやや小さくなったものの、圧迫痛と声のかすれに悩み、
 
やがて水すら飲めなくなって胃に外部から栄養を注入する胃ろうの造設術を受けました。
 
 
ある日病室を尋ねるとちょうどおやつの時間。
 
ご主人が「こいつはメロンが好物でね。
 
搾ってたっぷり入れてやるんです」と。
 
内心多過ぎるんじゃないかなと心配している私に、「ねぇねぇ、ちゃんとメロンを味わえているのよ」と彼女。
 
「胃がいっぱいになるとゲップが出るでしょ。
 
そうするとメロンの香りがフワァって上がってくる」とうれしげ。
 
「ゲップできる力があって良かった」との言葉に訳もなく感動しました。
 
 
彼女はご主人と20代の娘さんとの3人暮らしでした。ある朝、病室を訪ねると「私ね、正月は迎えられないと思えるの」と言われました。
 
「そう。そう感じるのですね」と返しながら、前夜から付き添っているはずの娘さんのことを思いました。
 
一人部屋で一隅にトイレがあり、そのとき娘さんはトイレにいたのです。
 
私におっしゃっているというより娘さんに聞かせたいのかなと思い、話を遮ることなくじっくりと耳を傾けました。
 
 
話が一段落したころ外出から戻ったふうに装って笑顔でベッドサイドのカーテンを開けた娘さん。しかしその目は真っ赤でした。
 
それから数日、ご主人も娘さんも仕事を休んで付き添うようになりました。
 
ある日、病室を訪ねると家族旅行の思い出話の最中。
 
ご主人が「あの温泉、また3人で行きたいね」と言うと彼女も笑顔でうなずきました。
 
 
 
誘われて私も加わり(いま何ができるだろう)と相談。
 
病室で温泉気分を味わえないかなという話になり、すぐに観光協会に電話しました。
 
初めは湯の花も砂蒸しの砂も外には出せないとの返事でしたが、
 
ご主人と丁寧に状況を説明してお願いすると、それならと送ってくださることになりました。
 
 
それから数日、彼女の容体が急激に悪化しました。
 
先方に問い合わせると今日にも届くはずと。
 
最寄の郵便局と病院の受付に事情を話し「届き次第に」とお願いしました。
 
 
 
彼女も楽しみにしていた(温泉)が届いたのは呼吸回数が減り始めたころ。
 
「これで体を拭いてあげたい」とのご主人と娘さんの思いを受け、3人で体を拭き、
 
小さなたらいに砂を入れて足を浸しました。
 
本当にうれしそうな顔で「ありがとう」と彼女。
 
「私たちこそ、ありがとう」とご主人と娘さん。
 
その30分後、彼女は家族の輪の中で静かに息を引き取られました。
 
 
 
暮れも押し詰まった午後、手紙が届きました。
 
「悲しみはなかなか癒えませんが、十分なことをしてあげれたと思います。
 
時間はかかるかもしれませんが、前を向いて生きていけるように思います」~
 
 

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